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柿の木便り

「なんとなく体調が優れない」そんな心とカラダの不調に寄り添ってくれる東洋医学って?(後編)

なんとなく体調が優れない。なんだかだるい。頭痛に生理痛、肩こりに腰痛、冷えや便秘。病院にいくほどじゃないけどなんとかしたい。

そんな心とカラダの不調に寄り添ってくれる「東洋医学」。

東洋医学ではデリケートゾーンをどう捉えているの? 不調を改善していくためにできることは?

鍼灸マッサージ師でアロマセラピスト、女性のための健康医療研究グループ 天使のたまご代表の藤原亜季さんに教えてもらいました。

(前編からの続き)

 

 

女性にとって大事な「会陰」のケアで全身の血の巡りを良くする

 

−東洋医学では、デリケートゾーンをどのように捉えていますか?

 

藤原: ツボは全身に361個あるんですが、デリケートゾーンには「会陰」というツボがあります。臨床で直接治療をすることはないけれど、女性の心とカラダにとっては大事な場所。会陰は、カラダの中を流れるエネルギーの通り道である「経絡」のなかで、身体の背面を走っている陽の脈である「督脈」、身体の正面を走っている陰の脈である「任脈」、生殖に関わる「衝脈」の3つの大事な脈が合わさる場所なんです。

ツボというのは、押すと効く「治療点」であり身体の反応が出てくる「反応点」でもあります。そう考えると、会陰にはカラダのあらゆる不調が現れます。子宮や卵巣とも繋がっている場所なので、婦人科系の疾患の反応も出やすく、女性にとってはとても大事なところなんですね。

  

  

−会陰のツボに「反応がある」というのは押したときに痛くなるということですか?

 

藤原: ツボは必ずしも押したときに痛むわけでなく、押したときに凹んだ感じがする、毛の色が濃くなった、色素沈着するといった反応もあります。たとえば、腰痛持ちの人が背中の毛が濃くなるといったこともあるんですね。だから私たち鍼灸師は、そうしたカラダの変化も見ていきます。ですので、会陰の反応としてみるのは、月経やおりものですね。

 

−へえ。ちなみにおりものの変化はどう見ますか?

 

藤原: おりものの状態は、東洋医学では、体に熱がこもっていると粘度が高くなって匂いも強くなる、体に冷えがあるとサラサラした感じで匂いが少なくなると捉えます。

 

−シルクの布ナプキンをつけたときに身体がぽかぽか温かくなった経験があるのですが、デリケートゾーンと全身の血の巡りは関係がありますか?

 

デリケートゾーンは身体の内臓と直接つながっている場所なので、温めるとカラダも温かくなります。というのも、会陰は経皮吸収率が最も高い場所です。腕の内側を1とすると会陰は42とも言われます。カラダに不調があるときは、デリケートゾーンにあてるものをシルクやコットンなど、肌に優しいものにすることをおすすめします。

また、血の巡りが悪くなる「瘀血」の典型的な症状が「痔」なんですね。そう考えると、近い場所にある会陰を、座浴で温めたりマッサージしてケアすることは良いことだと思います。

月経は、女性のカラダの状態知るバロメーターになります。月経血に塊がある場合は、血が滞っている「瘀血」。月経周期が普段よりも短い場合は、カラダに熱がこもっている。月経周期が普段よりも長い場合は、血が足りない「血虚」、もしくは気が足りない「気虚」。月経周期が乱れるのは、ストレスが原因で気が滞る「気滞」ということになるんですね。

  

 

女性の心とカラダと親和性の高い東洋医学

 

−東洋医学では、女性ホルモンのような、妊娠・出産、生理など生殖に関わることはどのように捉えているのでしょうか?

 

藤原: 東洋医学には女性ホルモンという概念はありません。それに代わるものが「腎(じん)精」。東洋医学において、女性は7の倍数で成長して老化すると考えられています。7歳で歯が生えそろって、14歳で初潮を迎えて、21歳で気力・体力が旺盛になって、28歳で妊孕力がピークになって、35歳で体力が劣ろえて、42歳で白髪が出始め、49歳で閉経する。この腎精の流れは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌とほぼ一致すると言えます。これが「黄帝内経(こうていだいけい)」という中国で現存する最古の医学書に書かれたのは2000年以上前。女性ホルモンという科学的なことがわかる前から、東洋医学では、女性のカラダは「腎精」という生殖に関わるエネルギーによって成長と老化を迎えられると考えられていたんですね。

「若さの源」とも言われる腎精は、ストレスの影響でも消耗されていき、足りないと老化も早く進んでいきます。一方で、きちんとした生活習慣で補っていくことができるんですね。腎を補うには、昆布やワカメ、ひじき、黒ごま、黒豆、きくらげ、黒酢など黒い食べ物が良いとされていますよ。心地良い適度なセックスや会陰のケアも良いと思います。

  

 

−ほお。東洋医学は、女性の心とカラダとすごく相性がいいですね。

 

藤原: そうなんです。実は今、私は妊娠中なんですが、自分自身が妊婦になって、改めて東洋医学の力を実感しています。今から15年前、27歳のときに第一子を出産して、妊娠期間の不調やストレスがあまりにつらかったので、産後半年の頃に、妊娠中の女性専門サロンを開院したんですね。鍼灸治療などの東洋医学とアロマセラピーを融合したメソッドで、多くの妊婦さんたちをサポートさせていただいています。

現在私は42歳の高齢妊婦ですが、15年前と比べて心にもカラダにも不調がないのは、東洋医学の力が大きいと思っています。つわりも鍼をすることで改善され、同時にメンタリティも改善される。本当にストレスがないんです。自分のコンディション次第でこんなにも心とカラダの負担が違うんだということを身を以て感じています。

 

 

自分の心のカラダの状態を知って、定期的なメンテナンスを

 

−東洋医学の観点で、自分の心とカラダの状態を知るにはどうしたらいいですか?

 

藤原: セルフチェックもできますが、詳しく知りたい場合は、鍼灸院に行けば教えてくれるはずです。私たちの女性専門の鍼灸院「天使のたまご」では、患者さんの状態を四診で見た上で、その方に合った方法で治療を施していきます。

また、東洋医学の本は多く出版されているので、学んでみて、症状から自身の心とカラダの状態をチェックしてみても良いと思います。東洋医学に特化したものではないんですが、私の著書『めぐりをよくする美子宮レッスン』にも東洋医学の観点から自分の体質を知るセルフチェック表を載せています。

 

−東洋医学の知識を知っておくとの知らないのでは「なんとなくしんどい」ときの気持ちが大きく変わってきそうです。

 

藤原: 平均寿命も長くなって、生まれてから死ぬまで、調子がいいときも悪いときもありますよね。私たちは誰もがそういった揺らぎのなかで歳を重ねていきます。病気じゃないけどなんとなく不調を感じる「未病」は、年齢、ストレス、気候によっても影響を受けます。最近はお天気が不安定なので、気圧の変化で具合が悪くなることもあるかと思います。

日々変動しながら、歳を重ねていくなかで、できるだけ調子のいい状態をキープしていこうというのが東洋医学の健康観です。揺らぎをいい方に傾けるために、食事や睡眠といった生活習慣を整えながらも、「なんとなくしんどい」と感じたら放っておかずに、東洋医学のアプローチでご自身をケアしてみてください。

みなさん、鍼灸を終えた後によく「軽くなった」とおっしゃるんですが、本来はそれが「調子がいい」状態です。未病も積もり積もれば大きな病気にもつながりかねないので、日々の心とカラダのメンテナンスはとても大事です。

女性の場合は、生活習慣の乱れやストレスの影響を受けやすい生理を健康のバロメーターとして、生理周期に合わせて鍼灸院に行くのもおすすめです。定期的に自分に合ったメンテナンスをして、心とカラダのバランスを健やかに保っていきましょう。

 

(おわり)

 

text by 徳瑠里香  Illustration by 遠藤光太 

 

 

藤原 亜季 さん

「女性のための健康医療研究グループ天使のたまご」代表。1978年京都府生まれ。自らの妊娠・出産を機に、2006年、東京・銀座に妊婦専門治療院を「天使のたまご」を開設。そして40才を超えてから不妊治療を経て15年ぶりの妊娠。産後にプロデュースしたマタニティケアを自ら堪能中!東洋医学とアロマセラピーを融合したメンタリティに配慮した独自のメソッド゙で、妊娠しやすい心と身体づくり、 妊娠中のマイナートラブルの解消、そして産後のケアまで、女性の健康と美容をトータルにサポート。マタニティケアの第一人者として臨床に携わる傍ら、学術研究や講師活動、妊婦や子ども専用の商品企画および開発、テレビや雑誌などメディアなどでも広く活躍している。