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柿の木便り
自分のカラダを知って、自分にやさしくできる選択を。中村寛子×寺尾彩加×小林味愛(後編)
日々うつろいゆく私たちの心とカラダ。生理、尿もれ、デリケートゾーンのトラブル。そんな女性特有の悩みに寄り添ってくれるプロダクトやサービスが生まれています。 選択肢をもって、自分を知ることができたなら、きっと自分にもっとやさしくできるはず。 女性の健康課題を解決するfemtech(フェムテック)のセレクトショップを運営するfermata(フェルマータ)の中村寛子さんと、吸水型ショーツを展開するPeriod.(ピリオド)の寺尾彩加さん、デリケートゾーンケアブランド明日 わたしは柿の木にのぼるの小林味愛が、女性の心とカラダのヘルスケアをテーマに語り合いました。 (前編はこちらから。)
かゆみや性交痛の緩和は、デリケートゾーンの洗浄と保湿か
小林味愛(以下、小林): この春、新商品ができたんです。 中村寛子(以下、中村): すっごいいい香りですね。 寺尾彩加(以下、寺尾): つけ心地がサラサラしてる〜。 小林: 香りは自律神経を整えることを意識したラベンダーを配合していて。ジェルタイプのセラムなんですが、化粧水みたいなさっぱりとしたテクスチャーなんです。 中村: すっと肌に馴染みますね。デリケートゾーンのウォッシュは多いけど、乾燥を防ぐ保湿アイテムはまだ少ないからこそ、すばらしい。そうそう、伊勢丹でPOPUPをやったときに、柿の木さんのオイルを買ってくださったお客さまがいて、1週間後の三越のPOPUPでミストを買いに来てくださったんです。「柿の木さん使ったらお股がふっくらしました」って。効果を実感してファンになってくださる人がいて、私たちも嬉しいなあって。 小林: うわあ、嬉しい。私もPOPUPで店頭に立っていると、デリケートゾーンを中までゴシゴシ洗っています、ボディソープやハンドソープで洗っています、という方がいらっしゃっいます。デリケートゾーンには菌がバランスを保って自浄作用が働いているから、洗いすぎないでくださいねってお話して。うちのウォッシュを買っていってくださった方が「かゆくなくなった!」と報告に来てくれることもあります。 中村: デリケートゾーンがかゆかったり痛かったりする方は、専用のソープでウォッシュして保湿するだけでも、変わりますよね。 小林: あとは、性交痛があるという方もいらっしゃって。乾燥していることが原因の場合も多いので、保湿することをおすすめしています。 中村: 性交痛は保湿して潤いを与えること、「Ohnut」のような性交痛を軽減するアイテムを使っていただくのも良いと思います。fermataでも先日、60代のカップルが男性の提案で買っていかれて、すてきだなって思いました。 小林: 柿の木の商品も、男性がパートナーへのプレゼントに購入してくれるケースは多いです。産後に感謝の気持ちを伝えたいって。 寺尾: やさしい!ちなみに私は、デリケートゾーン用のフェミニンウォッシュで顔も全身洗ってます。
日々のデリケートゾーンのケアから自分の心とカラダを知る
中村: 味愛さんはどうして、デリケートゾーンのケアブランドを始めようと思ったんですか? 小林:私はすっごく働いてたんですよ。国家公務員になって民間のコンサルに転職して、20代は残業も徹夜も出張生活も当たり前で。社会に貢献するためにがんばろうと常に気を張ってたけど、気を抜くとすぐに体調を崩す。体調を崩すなんて「弱い」と思ってたから誰にも言えなくて。ひどいカンジダを繰り返して、昼休みに産婦人科に駆け込んで、かゆみを抑える投薬をしてもらうんだけど、根本治療にはならない。心とカラダが悲鳴をあげる中、自分も周りの人も大事にできなくなって限界が来て、30歳でサラリーマンを辞めたんです。
小林: そこから自分の心とカラダを守るライフスタイルを提案したくて、「明日わたしは柿の木にのぼる」を立ち上げました。デリケートゾーンは自分の心とカラダを知るバロメーターになる。社会は急には変わらないから、女性たちが毎日10秒でもデリケートゾーンをケアすることで、自分を大事にできるようにって。同時に、持続可能な社会にしていくために、大量生産大量消費ではなく、顔が見える福島の生産者さんからこれまで捨てていた柿の皮を原料として買い取って、農家さんたちの所得向上にもつなげたかったんですね。やってみたらなかなか大変で、開発に3年かかりました。
寺尾: サスティナブルなのが、めちゃくちゃかっこいい。これまで廃棄されていたものがデリケートゾーンをケアする新たな商品になるなんて。 中村: 味愛さんから防腐剤が入ってないから詰め替え用をつくるのが難しいという話を聞いて、カラダにも地球にも優しいものってなんだろう、と考えさせられました。
自分のカラダを知ることは、日常に癒しとワクワクを生む
小林:デリケートゾーンケアのアイテムを開発して、他のプロダクトも含めて自分でも使うようになって、自分の心とカラダの状態がわかるようになったし、結果として自分で人生を選べるようになりました。日々のセルフケアを通じて、疲れていることがわかったらちゃんと休めるようになった。 寺尾: わかります!それまでは顔とか、見えるところだけをケアしてたけど、全身をケアするようになってカラダに触れる機会が増えて、自分にやさしくなれた気がします。
中村:自分のカラダを知ることってこんなにもワクワクすることなんだなあって。あんなに嫌だった生理も、試せる月経カップや吸水型ショーツがあることで楽しみになった。ヘルスケアに関する知識が増えたことで、「今日はPMSだからイライラしちゃうのも仕方ない」って自分にもやさしくなれる。だから私たちはやっぱり、Fermataを通して、新しい選択肢があることを知ってもらいたいんですよね。 寺尾: fermataさんのPOP UPってすごくいいんですよね。外からも何をやっているのかわかりやすくて、レイアウトも魅力的だし、お悩みが書かれた“モヤモヤカード”があって、商品を買わなくても情報を持って帰れる。
中村:嬉しい〜。お客さまが生の声を届けてくれるので、リアルなお悩みをカードにできたんですよね。取り扱っている商品も私たちが一番のファンなので自信を持っておすすめできる。お客さまも悩んでた!求めてた!とファンになってくれる方が多いんですよ。私たちは、たくさんの人たちから一気に広く支持されるものというよりは、熱狂的なファンがいるブランドさんとお付き合いしたいと思っているんですよね。Period.さんや柿の木さんのように。 小林: わあ、ありがとうございます!
いつどこにいても、自分の心とカラダにやさしくなれるように
中村: fermataがこれからやるべきことは明確で、フェムテックのプロダクトって売れるの?という問いの答えを実証する役割があると思っています。今年は地方でも積極的にPOP UPなど「新しい選択肢に触れられる場」を提供すると同時に、女性のウェルネスに紐づいたキャリア形成の啓蒙活動も行っていきます。 小林: めちゃくちゃいいですね。私たちは福島に会社があるんですが、やっぱりまだまだ情報格差があると感じていて。アレンジするので、福島でもやってください!
中村: ぜひ!いくつか一緒に回るのもいいですね。フェムテックをバズワードではなく、みんな当たり前のように生活にとりれていくためには、ブランドや企業と一緒に、地方も含めて地道に思想やプロダクトを伝えて広げていくしかないなと思っていて。 寺尾:まさにfermataさんは女性のカラダにまつわる悩みをワクワクに変えてくれるハブになってくれていますよね。Period.は47都道府県から注文が来ていて。私たちはジェンダーや場所にとらわれず、生理があるすべての人に寄り添いたい。今必要とする人に届けていきたいと思っています。 中村: どこに住んでいるか関係なく、必要としている人たちに情報とプロダクトを届けて、一緒に盛り上げていきたいですね。 小林: 本当に。自分たちが生きている間に、ウェルネスの観点から女性も男性も今よりも生きやすい社会にしていきたい。今日は楽しい時間をありがとうございました!
中村 寛子さん fermata co-founder/COO Edinburgh Napier University (英)卒。ad;tech/iMedia Summit主催。2015年にmash-inc.設立。女性エンパワメントを軸にジェンダー、年齢、働き方、健康の問題などまわりにある見えない障壁を多彩なセッションやワークショップを通じて解き明かすダイバーシティ推進のビジネスカンファレンス「MASHING UP」を企画プロデュース。fermataではコミュニティ運営と各種イベントを統括。hellofermata.com
寺尾彩加さん/Period.代表取締役 東京出身。大学卒業後、新卒で動画コンサルティングを行うベンチャー企業LOCUSに入社。クリエイティブコンサルタントとして女性商材の動画プランニングに従事した後、広報を経験。在職中にサニタリーショーツブランド「THINX」と出会い、輸入代行をする準備を進めるも断念。クラウドファンディングで資金を集め、2019年3月にオリジナルブランドとして「ピリオド」をスタートさせ、10月に法人化。period-tokyo.com/
小林味愛/株式会社陽と人 代表取締役 1987年東京都立川市生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向。その後、株式会社日本総合研究所での勤務を経て、2017年に福島県国見町に「農産物の流通・6次化商品開発・ 地域づくり」を行う株式会社陽と人を設立。現在、東京都と福島県の2拠点で活動を行なっている。
text by 徳 瑠里香 photo by 川島彩水