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柿の木便り

一日の終わりに自分をいたわり「心地よい眠り」へ。天然精油が奏でる「森の香り」のアロマスプレー

 

「今日も一日、おつかれさまです」。

そう自分に声をかけるようにして、慌ただしい一日の終わりに束の間でも、自分をいたわる「セルフケア」を取り入れられるように。福島県南会津の針葉樹をはじめ、10種以上の天然精油を贅沢にブレンドした「女性の眠り」に寄り添うアロマスプレーを開発しました。

 開発を進めた「明日 わたしは柿の木にのぼる」、監修を担ったパラマウントベッド、デザイナーの視点から、開発物語を辿ります。

 

 

 

香りをスイッチに、安心して「わたしに還る」

 

フェミニンケアブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」と、介護・医療ベッドを提供し“眠り”を追求するパラマウントベッド。両社はともに「更年期と睡眠の不調を改善する」実証事業*を行ってきました。女性たちが健やかであるために、自分たちは何ができるのか。働く女性たちのリアルな声に耳を傾けながら、チームで議論を重ねる日々の中で、アロマスプレーは生まれました。

 

*令和5年度 経済産業省「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の採択事業として『働く更年期女性の不調改善と職場での男性のサポート体制構築 実証事業』を実施

 

パラマウントベッドのプロジェクトチームメンバー:左から、大槻朋子さん、塩貝有里さん、岩井文さん

 

 「睡眠研究の第一人者である白川修一郎先生が、ヒノキやスギの針葉樹に含まれる『セドロール』という香り成分が睡眠環境を心地よく演出するのに優れていることを睡眠学の講座でレクチャーされていました。学んだその知見をチームに共有したところ、更年世代の女性ホルモンの揺らぎに寄り添うような香りと組み合わせて調合した製品をつくる、というアイデアが出たんです」(パラマウントベッド睡眠研究所・塩貝さん)

 

そこからすぐに、天然精油のセドロールを含む香りの試作品を製作。そして、更年世代の悩みを抱える女性たちを対象に実施した対策プログラムのセルフケアの一つとして香りの試作品を導入しました。プログラムで明らかになった更年世代と睡眠環境の関連性と、香りを暮らしに取り入れた女性たちの声が開発の後押しとなったのです。

 

 

プログラムに参加してくれた一人の女性が、仕事から家に帰ってきて、この香りが匂った瞬間に『わたしが還ってくる』安心感があったとおっしゃっていたんです。女性も社会の中で肩書きや役割を背負うのが当たり前になりつつある今の代、香りが作り出す空間が気分をゆるめて心をほどくスイッチになるんだなと。香りを一つのきっかけに、安心して眠れる環境づくりのサポートができたらいいなと本格的に動き始めました」(パラマウントベッド・大槻さん)

 

心地よい睡眠環境へ導く、100%天然精油の香り

アロマスプレーとして製品化するうえでこだわり抜いたのは、100%天然由来の原料を使用すること。ベースとなる芳香蒸留水は、あんぽ柿の名産地である福島県国見町の柿の皮から抽出。蒸留する水には、製造工場がある新潟県五頭山麓の湧水を使用しています。そこに、福島県会津の針葉樹をはじめ、ゼラニウム、ラベンダー、リンデン、クラリセージなど、女性の睡眠環境をサポートする10種類以上の天然精油をブレンドしました。

 

明⽇ わたしは柿の⽊にのぼる 代表小林味愛

 

「天然由来のものには“揺らぎ”があります。植物たちも天候に左右されるので、フレッシュな野菜や果物の味わいと同じように、香りが微妙に変化することも。その揺らぎを受け止めながら、それぞれの植物の力を最大限活かし、森林浴をしているようなやさしい香りに調合するのは、正直かなり大変だったけど貫きました。たった一人でも、女性に健やかな眠りを届けたい、その一心で。強い思いで取り組んだからこそ、一切妥協のない香りに仕上がったと自負しています」(明日 わたしは柿の木にのぼる・小林)

 


「このアロマスプレーには、セドロールをはじめ、ヘリオトロピン、α-ピネンほか心地よい香りで睡眠環境を改善する可能性がある香りの成分が含まれています。森林浴の優れたリフレッシュ作用に関する研究結果もあるんです。化学的な香料のような刺激がなく、森にいるような天然の香りは入眠前にぴったりだと思います」(パラマウントベッド睡眠研究所・塩貝さん)

 

関わる人たちの「喜びが循環」するものづくりを

原料の調達から製造、販売まで、アロマスプレーに関わる人たちに「無理が生じないこと」にも心を砕きました。たとえば、ベースの芳香蒸留水の原料には、あんぽ柿を製造する過程で廃棄されていた柿の皮を採用。眠っていた地域資源を活かすかたちで、農家さんの所得向上を目指します。

 

 

「ブランドとして、提供価格を抑えるために顔の見えない遠くの誰かを搾取するようなことは絶対にしたくないんです。顔が見える福島の農家さんの想いと労力を無駄にすることなく、所得を上げて、一緒に喜びを分かち合いたい。だから、誰も無理していませんよね?って関わる人たちに確認して、仕組みの調整を重ねてきました」(明日 わたしは柿の木にのぼる・小林)

 

 

アロマスプレーの製造は、新潟にある障がい者就労施設「特定非営利法人あおぞら」にお願いしています。開発中、チームで工場を訪ねました。

 

あおぞらの工場は新潟・五頭山の麓にあります。

 

芳香蒸留水に使用している湧水

 

 「あおぞらさんには、1mmもずれることなくピシーッと美しくラベルを貼れる方や見逃してしまうような細かな傷を発見できる方がいるんですよ。それぞれの飛び抜けた特性を活かして、アロマスプレーを仕上げてくれる。湧水もわざわざ山まで汲みに行ってくれているんです。私たちが訪ねたときもすごく喜んで迎えてくれた。こういう喜びが循環する仕組みの中でものづくりをしたいと改めて思いました」(明日 わたしは柿の木にのぼる・小林)

 

工場では1本ずつラベルを手りしています。

 

 傷や汚れがないか、1本ずつ人の目で確認。

日常に溶け込むやさしい佇まいと香りで、自分をいたわる習慣を

アロマスプレーがお客さまの手元に届くときのパッケージ、ボトルのデザインにもそっと願いを込めました。

 

デザインを手がけた北山瑠美さん

 

「枕元には時計やスマホ、デジタルデバイスが置いてあることが多いと思うんですが、なんだか気持ちが休まらない。アートを飾るような感覚で枕元に置いて、心を落ち着かせられる存在であれたらと思ったんです。淡いグラデーションのある水彩で、香りそのものである緑の森にも見える、女性の心身の“波”を描いています。水彩の穏やかな波に、規則正しい波の線を重ねることで、波を読んで、心身のリズムを整えていけますように、という願いを表現しました」(デザイナー・北山さん)

 

 

「つくり手のみなさんの女性に対する真剣な姿勢、やさしさと真面目さが佇まいからも伝わったらいいなと思いました。実は、パッケージの内側には手紙のように、メッセージが秘められています」(デザイナー・北山さん)

 

 

「今日も一日お疲れさまです」。

パッケージの表に書かれた言葉を伝えるように、睡眠環境が気になるという妻にアロマスプレーをプレゼントした男性のお客さまもいます。気分転換が必要な受験生のお子さんと親子で使っているお客さまもいます。

 

「自分や大切な人に、ちょっとやさしくなりたいなと思ったら、ぜひ手に取っていただきたいです。暮らしに自然と溶け込むやさしい佇まいと香りなので。対策が必要な特別なときだけでなく、自分をいたわるセルフケアとしてこの香りを日常に取り入れてもらえたら嬉しいです」(パラマウントベッド・大槻さん)

 

 

text by 徳 瑠里香

 

大槻朋子さん
パラマウントベッド株式会社 経営企画本部事業戦略部マネージャー / 睡眠改善インストラクター

新卒でパラマウントベッドに入社、九州エリアでの介護領域セールスを担当後、健康事業に異動し、よりよい眠りの提供を目指す「Active Sleep」のブランドプロジェクトに参加。経営企画本部へ異動し、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)としてパラマウントベッドヘルスケアファンドの立ち上げを行い、現在7社のスタートアップ出資を実行。また、sleep×femtechのプロジェクトを立ち上げ、人生を通じた女性の健康を睡眠でサポートするブランドローンチを目指す。

 

塩貝有里さん

パラマウントベッド株式会社 睡眠研究所博士(理学)

睡眠改善インストラクター欧州で物理学の博士を取得した後、大学の研究員として生理学と物理学の境界領域で人の体の仕組みについての研究に従事。日本に帰国し、医療・ヘルスケア・人間工学の分野での知見を生かして様々なメーカーでの研究開発に携わった後、2021年にパラマウントベッド睡眠研究所に入社。睡眠データを用いた実証実験・研究の担当としてsleep×femtechのプロジェクトに参加し、健康に役立つ科学的な知識を少しでも世の中に広めることを目指している。

 

岩井 文さん

パラマウントベッド株式会社 経営企画本部バリュークリエイトグループ事業開発グループ所属

千葉県印西市出身。多摩美術大学を卒業後、パラマウントベッド株式会社に入社、デザイン部に配属後製品開発におけるプロダクトデザインを担当。長年の製品デザインで培ったデザイン思考を活かし事業開発に従事している。

 

小林 味愛

株式会社陽と人代表

東京都立川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向、株式会社日本総合研究所を経て、福島県国見町に株式会社陽と人設立。 福島県の規格外農産物の流通など福島の地域資源を活かして地域と都市を繋ぐ様々な事業を展開。2020年には国見町のあんぽ柿の製造工程で廃棄される柿の皮を活用したデリケートゾーンケアブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』を立ち上げ、第9回環境省グッドライフアワード特別賞、2021年度地方創生賞など数多くの賞を受賞。商品の販売に留まらず、経済産業省フェムテック実証事業などにも複数回採択され、女性の健康課題に関する企業研修やワークショップなど医療の専門家と連携しながら様々な普及啓発活動も行う。復興庁や内閣府など政府の委員も務める。子育てをしながら福島と東京の2拠点生活中。