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柿の木便り
更年期は「わたし」をいたわる時間〜ゆらぎの時期をやさしく整える〜

「更年期」という言葉に、不安やとまどいを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でもこれは、誰の人生にもそっと訪れる、“変わり目”の時間です。
少しずつ体に変化があらわれたり、こころが揺れたり。
そんな自分に気づいて、やさしく手をかけてあげること。
この先の人生を、もっと心地よく、自分らしく過ごしていくために。
まずは、自分のからだとこころの声に耳を傾けてみませんか?
女性ホルモンとこころ・からだのつながり
女性のからだとこころに大きく関わる「女性ホルモン」。
その主役となるのが、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」です。
特にエストロゲンは、月経や妊娠だけでなく、心の安定や肌・骨にも関わる、女性にとって大切なホルモン。
「更年期」とは、閉経をはさむ10年間——平均の閉経年齢は約50歳なのでおおよそ45歳から55歳の時期を指します。
この時期には卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減っていきます。
女性ホルモンは脳の視床下部が指令を出し、卵巣から分泌されます。更年期に卵巣機能が低下すると、脳の指令通りに卵巣がエストロゲンを分泌できなくなり、脳がパニックを起こします。そのため、自律神経が乱れ、心身にさまざまな不調があらわれることがあるのです。
「更年期症状」と「更年期障害」のちがいって?
更年期の不調は人によってさまざま。
ホットフラッシュ、頭痛、めまい、気分の落ち込み……200種類以上もの症状があるといわれています。
こうした症状が、日常生活にまで影響してしまうような強いものになると「更年期障害」と診断されることもあります。
50代女性の約38%がこの「更年期障害」の可能性があると考えられるという厚生労働省の調査結果もあります。
感じ方も、現れ方も、本当に人それぞれです。
また、この時期は、更年期症状と似ていて判別しにくい別の病気が隠れていることがあります。例えば、子宮体がんが原因の不正出血、甲状腺機能の低下による冷えや肌の乾燥、関節リウマチによる手指関節の腫れや痛みなどがあります。
気になる症状がある場合は、自己判断せずに婦人科や内科を受診しましょう。また、1年に1回の定期健診を必ず受けることをおすすめします。
もしかして更年期症状?セルフチェックしてみましょう
あなたの今の状態を知る、ひとつの目安として「簡略更年期指数(SMI)」があります。
症状の程度に応じて、当てはまるものに◯をつけ、合計点を出します。
強:毎日のように出現 / 中:毎週のように見られる / 弱:症状として強くはないがある
0~25点・・・上手に更年期を過ごしています。これまでの生活を続けていきましょう。
26~50点・・・食事、運動に注意をはらい、無理のない生活を心がけましょう。
51~65点・・・医師に相談し、生活指導、カウンセリング、薬物療法を受けた方がいいでしょう。
66~80点・・・半年以上の計画的な治療が必要でしょう。
81~100点・・・各科の精密検査を受けましょう。更年期障害のみであった場合は、産婦人科や更年期外来などで長期の計画的な治療が必要でしょう。
※点数はあくまで目安です。「つらいな」と感じたときは、早めの相談が大切です。
なぜつらい人と、そうでない人がいるの?
更年期は女性の誰もが経験することですが、更年期症状の強さやあらわれ方には個人差があります。一般的に、更年期に不調が起きやすい要因として以下の3つが挙げられます。
女性ホルモンの急激な減少というからだの変化に加えて、その人の体質や気質、そしてそのときの生活環境や職場環境など、さまざまな要因が重なり合うことで、更年期の症状が出やすくなることがあります。
中でも、特に大きな影響を与えるのが「置かれた環境」です。
たとえば、親の介護による精神的な負担や、慢性的な寝不足、
職場でのパワハラや過酷な勤務状況、人間関係のストレス——
そんな日々の積み重ねが、ある日突然、体の症状となって現れることも少なくありません。逆に、「苦しかった職場を離れたら、急にラクになった」という話も、実はよく耳にします。
だからこそ、どうか「自分が弱いから」「年齢のせい」と思わないでください。
それは、からだがちゃんと「今の環境、つらいよ」と教えてくれているサインかもしれません。
まずは、自分のまわりの状況をそっと見つめ直してみてください。
そして、食事や運動、睡眠、そしてこころのケアを、できるところから少しずつ。
必要なときは、医療の力を借りることも、決して特別なことではありません。
「わたしを大切にする」手段のひとつとして、どうか遠慮なく取り入れてくださいね。
更年期の治療法はいろいろあります
産婦人科医・宗田聡先生より:
「更年期障害の治療にはさまざまな方法があります。症状が軽い場合は運動や睡眠、食事の改善によって多くの方が日常生活を送れるようになっています。症状によっては、サプリメントを取ったりプラセンタを打ったり、あるいは漢方薬で改善を図ります。効き目には個人差があり、効果がない場合、対処療法として睡眠剤や鎮静剤など薬剤を使うことも。近年、ごく少量の女性ホルモンを不足している体に補う「ホルモン補充療法(HRT)」も積極的に行われています。HRTは、内服薬だけでなく塗り薬や貼り薬などの選択肢も増え、副作用も軽減し、効果も高く、患者さんの症状改善に役立っています。」
メノポーズ(更年期)カウンセラー・吉川千明さんより:
「更年期は自然なことだと放置せず、症状の治療や予防に手をかけることはとても意味のあることだと思います。更年期障害の治療法は確立していて、たくさんの症状に合わせて、いろいろな方法を試すことができます。傷やほころびは、つくろいながら、前に進んでいく。40、50代だけでなく、60代、70代、80代、その先も、元気でいるために、使えるものは利用しましょう。わたしの日常生活は自然派ですが、HRTや低用量ピルも取り入れて、女性にとって最大の難関である更年期を乗り切ってきました。次の30年、40年を健康でいるために医療に頼ることも自分のためのセルフケアの一環だと思って、上手に活用してください。」
デリケートゾーンと骨盤底筋の変化にも目を向けて
①更年期に乾く!デリケートゾーン
膣まわりのデリケートゾーンは、更年期のエストロゲンの欠乏の影響を受けやすい場所でもあります。更年期はエストロゲンの低下により膣の自浄作用が弱まって、乾燥し細菌の繁殖や炎症が起きる「萎縮性膣炎」になりやすいのです。
潤いと弾力も失われ、粘膜であるため皮膚よりも深刻な悩みに発展することもあります。
膣まわりの粘膜は乾燥して薄くなり、膣口も緩んできます。
膣の乾燥を「ドライヴァジャイナ」と言います。ドライヴァジャイナ(膣乾燥)チェック表で3つ以上症状が当てはまる人は症状が進行中。
当てはまる方はこちらのリンクにデリケートゾーンのケア方法を詳しくまとめているのでぜひ試してみてくださいね。
【デリケートゾーンのケア方法】
https://ashita-kaki.com/pages/howtocare/
更年期以降、乾燥が強い方や以前よりお肌が敏感な方は、ウォッシュでは洗わずに、オイル洗いやオイル入浴などオイルを駆使する方法がおすすめです。
②GSM(閉経後泌尿生殖器症候群)という言葉をご存知ですか?
GSMとは、閉経に伴う女性ホルモンの低下によって、膣や外陰部が萎縮し、皮膚や粘膜が乾燥するなどデリケートゾーンの不快な症状の総称です。2014年に国際女性生機能学会と米国更年期学会が提唱した概念で、日本ではまだあまり聞き慣れないかもしれません。
「年齢だから仕方ない」とがまんせず、症状があれば婦人科で相談してみましょう。
症状のある方は前述のデリケートゾーンケアも試してみてください。
③更年期にゆるむ!骨盤底筋
更年期によるエストロゲンの減少は、骨盤底の機能低下にも影響を与えます。骨盤底は、骨盤内の膀胱、子宮、直腸を支え、排泄のコントロールを行なっています。骨盤底筋群が緩むと、頻尿、尿漏れなどの尿トラブルが生じます。さらに、骨盤内の臓器が下がり膣から出てきてしまう「骨盤臓器脱」といった病気にもつながります。骨盤底筋のトレーニングやデリケートゾーンのマッサージを行い、症状が進む場合は産婦人科を受診しましょう。
【骨盤底筋トレーニング】
①仰向けに寝て、足を少し開きます。膝の間はこぶし1個分くらい開け、体の力を抜きます。肛門と膣と尿道を10秒ほどぎゅーっと締め、その後30秒ほどリラックス。これを10回繰り返します。
②肛門と膣と尿道を締める動きをもっと早いテンポで、ぎゅっ(締める)、ぱっ(緩める)を1セットで10回繰り返します。
①と②を1日数回に分けて、5セット以上行います。
「今のわたし」に、やさしさを。
——それが、未来のわたしを守ることにつながるから
わたしたち女性のからだは、これまで何十年も、気づかぬうちに一生懸命働いてきてくれました。
月経、妊娠、出産、育児、家事、仕事……。どんなときも支えてくれたこのからだに、そろそろ「ありがとう」と声をかけてあげたい時期かもしれません。
更年期は、決してネガティブなものではありません。
それは、からだががんばってきた証でもあり、人生の次の章へとやさしくバトンをつなぐ準備期間。
変化にとまどいながらも、少しずつ自分に合ったケアを見つけていくことで、きっと新しい自分との出会いがあるはずです。
「ちゃんと休んでいいよ」「少し甘えていいよ」
そんなふうに、これまで誰かにかけてきたやさしい言葉を、これからは自分にも向けてみませんか?
この揺らぎの時期が、あなたにとって、からだとこころをもう一度結び直す時間になりますように。
そして、日々の暮らしのなかで、ほんの少しでも心がほっとゆるむような瞬間が訪れますように。
無理にがんばらなくてもいい。
そう思えるだけで、ふっと何かがほどける日が、きっとやってくるはずです。
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更年期の「睡眠」と「セルフケア」についてもまとめた小さな冊子をご用意しています。
ふと立ち止まりたくなったとき、そっと手に取っていただけるような——
そんな「お守り」のような一冊になりますように。
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「更年期Handbook〜わたしのこころとからだを整える 眠りとセルフケア〜」の一部を編集
医療監修:宗田 聡先生(医学博士・広尾レディース院長・茨城県立医療大学客員教授)
更年期アドバイザー:吉川千明先生(認定メノポーズカウンセラー)