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柿の木便り
60代も元気に過ごすために。尿もれに困らない、更年期からのデリケートゾーンケア
月経周期にともない、長年私たちの心と体に
影響を与え続けてきた女性ホルモン。
閉経を迎えるにあたり女性ホルモンが大きく揺らぐ「更年期」を経て、
やがて分泌がほぼゼロになる「老年期」へ。
女性の体には、どのような変化が起きてくるのでしょうか。
「閉経前後5年ほどの更年期は“揺らぎの時期”。
それに対して、閉経後の老年期は“弱くなっていく時期”です。
だからこそ、老年期を元気に過ごすためには、
更年期からの準備がとても大切なんです」
そう話すのは、美容家・コラムニストの吉川千明さん。
科学的な視点を大切にしながら、
自然の心地よさと医療の力を上手に取り入れ、
年齢を重ねても健やかに生きる女性のあり方を、長年にわたり実践・発信してきました。
65歳を迎えた今、
吉川さんがあらためて伝えたいのが、
更年期から老年期にかけて女性を長く悩ませる「デリケートゾーンの不調」と、そのケアです。
更年期は、老年期を元気に過ごすための準備期間
更年期症状というと、ほてりや気分の揺らぎを思い浮かべる人が多いですが、今回はデリケートゾーンの話を中心にしていきます。
私自身、更年期には本当にたくさんの症状が出ました。でも、その中でもいちばん私を困惑させたのが、デリケートゾーンのトラブルでした。
なぜなら、まさかそれが更年期症状だと思っていなかったから。だから人にも相談できなかった。何年ものあいだ、霧の中を一人で歩いているような感覚でした。
ですから今回は、更年期から老年期にかけて、終わりなく女性を困らせるデリケートゾーンの症状と、そのケアについて、きちんとお伝えしたいと思ったのです。
更年期に起こったこと──混乱と不安のなかで
更年期は、まさにクライシスでした。ぐらぐら揺れる地面を、なんとか歩いているような感覚。口も目も、そしてデリケートゾーンも乾く。めまいやふらつきもあり、どうしたらいいのか分からず、混乱していました。

特につらかったのは尿意です。
映画も最後まで観られないし、レストランでも何度も席を立つ。尿がストッキングに伝わってくることもあり、外出すること自体がとても不安でした。正直、とても惨めでした。
馬に乗りたい、山に登りたい、歌舞伎を観たい。でも、尿が漏れないか不安で、その不安がやりたいことの足かせになっていた。生活の質を大きく落としていたと思います。
情報がなく、失敗を繰り返した時代
当時は、今ほどデリケートゾーンのケア用品も情報もありませんでした。だから、顔用のクリームを塗ってみたり、かゆみが出ると浴室にある浴用石鹸でゴシゴシ洗ってしまったり……。
でも、それが完全に逆効果だったのです。膣や外陰部は、顔や体よりもずっとデリケート。乾燥 → かゆみ → 洗いすぎ → さらに乾燥、という悪循環でした。どうしていいか分からず、泣きたいほどでした。
GSMとは何か──更年期以降に起こる3つの不調
デリケートゾーンの不調には、GSMという名前があります。ジーエスエムと読み、閉経関連尿路性器症候群という正式名称がついています。
更年期の時期に起こってくる、さまざまなデリケートゾーンの症状をまとめて、最近はこのように呼ばれるようになりました。
GSMの特徴は、次の3つです。

この“3徴”は、ぜひ覚えておいてほしいですね。私自身も、この3つすべてに悩みました。
女性ホルモンのエストロゲンは、皮膚や粘膜の潤いを保ち、膀胱や膣を支える筋肉の働きも守っています。更年期に急激に減少し、老年期にはほぼゼロになる。
すると、粘膜はさらに薄く、弱くなり、潤いを保つ力そのものが落ちていくのです。
外陰部の乾燥が招く、意外な連鎖
乾いた外陰部は、クッション性を失います。枯葉がカサカサと揺れるような刺激が、尿道口に直接伝わる。その結果、尿意を感じやすくなり、切迫性の尿もれにつながることもあります。
だから、外陰部は潤っていたほうがいい。これはとても大切なポイントです。

更年期・老年期は「泡で洗わない」
ここで、はっきりお伝えしたいことがあります。更年期、そして老年期のデリケートゾーンは、泡で洗わないでください。
私は2010年に『泡洗顔をやめる』という本を出しましたが、それは顔だけの話ではありません。外陰部も同じです。泡をやめる時期に入っているのです。
今の結論──オイルで洗い、オイルで潤す(千明流)
私が行き着いた結論は、とてもシンプルです。
オイルで洗い、オイルで潤す。これは、失敗を重ねた末にたどり着いた、いわば“千明流”のケア方法です。ぬるま湯とオイルで、摩擦をかけずに汚れを浮かせる。オイルなら、洗いながら保湿もできます。
乾いて傷つきやすい老年期のデリケートゾーンには、理にかなった方法だと実感しています。


尿もれは、筋肉だけの問題ではありません
尿道も膀胱も膣も、すべて筋肉でできています。それらを下から支えているのが骨盤底筋です。
鍛えることはとても大切ですが、骨盤底筋のトレーニングは時間がかかります。放っておくと、尿もれだけでなく、便もれに至ることもあります。
そして忘れてはいけないのが、骨盤底筋運動と保湿ケアは両輪だということ。トレーニングだけでは不十分なのです。
尿で湿ったデリケートゾーンは乾燥しやすく、しみやかぶれ、不快感の原因にもなります。常に保湿しておくことが重要です。
▼骨盤底筋の鍛え方

STEP1
仰向けに寝て足を少し開きます。肛門と膣と尿道を10秒くらいぎゅーっと締め、その後30秒ほどリラックス。これを10回繰り返します。
STEP2
肛門と膣と尿道を引き締めるテンポを早くします。「ぎゅっ(締)」「ぱっ(緩)」を1セットで、10回繰り返します。
*1日数回に分けて5セット以上行ってください。2〜3ヶ月程度続けると効果を感じられると思います。無理なく自分のペースで試してみてください。
*「ケーゲルベル」という膣の中に挿入し鍛えるアイテムもあるので、気になる方は検索してみてくださいね。
すぐにできること──下着を変える
下着もとても大切です。乾いた外陰部、デリケートゾーンを快適に支えてくれるものは、意外と少ない。
いろいろ試した末に行き着いたのが、ナナデェコールの『ナナリブショーツ』と、マアルの『満月パンツ』。私はもう、これしか履けません。
産婦人科も、セルフケアのひとつ
頻尿や尿もれに対しては、良い薬も出ていますし、膣の保湿に使える膣剤もあります。産婦人科も、遠慮なく頼ってください。
医療もまた、自分を守るためのセルフケア。そう考えていいのです。
自分を大切にする、という選択
正直に言うと、鏡を見て“ああ、歳をとったなあ”と思うこともあります。老化は、確実に進みます。
でもその一方で、知恵がついてきました。更年期の頃より、ずっとどっしり構えていられる。考えながら進む。それでいいではありませんか。
日々、つくづく思います。年を重ねるほどに、自分を雑に扱ってはいけない、と。
ちゃんとやれば、快適になります。年を取ることは、決して悲観することではありません。
今回紹介したケアは、ぜひあなた自身にもやってみてほしいと思っています。そしてもし、ご高齢のお母さまや、介護を受けていらっしゃる方がいらしたら、おすすめしてあげてください。
口には出さなくても、乾燥やかゆみ、しみる感じ、不快感に困っていらっしゃる方は、きっと少なくないはずです。デリケートゾーンのケアは、年齢を重ねるほど、生活の質に直結します。
自分を大切にすること。
それは同時に、身近な人を思いやることにもつながっていく。そんなケアの循環が、これからはもっとあっていいと、私は思っています。

吉川千明さん
認定メノポーズ(更年期)カウンセラー 「更年期からのヘルスケア」主宰。コスメのみならず、食、女性医療、漢方、植物療法、ファッション、インテリア、旅とナチュラルでヘルシーな女性のライフスタイルを提案。都内に7件の自然療法を取り入れたスパとショップを展開。植物療法を学んだ後、日本初の女性専用漢方薬局を開設。1990年代より、オーガニックコスメと植物美容を日本に広げたナチュラルビューティの第一人者。「サスティナブルの水先案内人」として、コスメに関わらず、サスティナブルでエコロジカルなブランドや企業様のセミナーやトークショーのファシリテーターなども務める。植物と美容、更年期ケアを専門とする。
*吉川さんのこれまでの歩みを辿った記事「わたしのバランス」はこちらから。



