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「ただそこにいる」ことに感謝する。なんでもない毎日の積み重ねがパートナーシップを育む【ファミリー心理カウンセラー・よしおかゆうみさん Interview】

2021.01.15

デリケートゾーンから知る、わたしの心とカラダ

出産、生理、PMS、更年期……。日々の生活、人生の中で、女性にはホルモンの影響によって心とカラダが揺れる瞬間が何度も訪れます。自分の意思ではどうにもならないその壁を一人で乗り越えていくのは困難に感じます。

 

結婚や同棲、パートナーや家族とともに暮らしている場合、身近な人の理解は不可欠。その関係性も、健やかな毎日を過ごすための大きな一つの要素となります。

 

とはいえ、自分ではコントロールできない相手があってのこと。育ってきた環境も性質も、体質も違う人間同士、良好なパートナーシップを築いていくためにできることは?

 

そんな問いを携えて、ファミリー心理カウンセラー、プリマリタル(結婚準備)カウンセラーとして、2万組以上の家族やカップルと対話を重ねてきたよしおかゆうみさんを訪ねました。

 

覚悟を決める第一歩として、自分と相手の価値観を知る

 

女性の心とカラダの健康を考えていくと、日々ともに暮らす人と、いかに良好なパートナーシップを築いていくか、も大事なテーマになってきます。海外の映画やドラマで夫婦やカップルがカウンセリングを受けている場面を見かけますが、日本ではあまり馴染みがないようにも思います。ゆうみさんが専門とする「プリマリタルカウンセリング」ってどういうものなのでしょうか?

 

よしおか: 結婚が当たり前ではなくなって、家族のかたちも価値観も、そこに現れる問題もそれぞれ違いますよね。プリマリタルカウンセリングは、アメリカ発祥の結婚準備講座。質問と対話、ワークショップによって、それぞれのカップルが抱える不安を一つひとつ取り除き、お互いへの理解を深め、結婚への意欲を高めていくプログラムです。

 

ゆうみさんはプリマリタルカウンセラーとして、結婚前のカップルとどんな対話をしていくのでしょうか?

 

よしおか: 結婚前に相手には言えないモヤモヤ、悩みってありますよね?「親がパートナーを気に入らない」「セックスがマンネリ」「お金、大丈夫かな?」「子どもはほしくない」「もっと自分に会う人がいるかもしれない」とか……。そういう不安を抱えたまま結婚すると、数年後必ず壁にぶつかることになるんですね。

 

結婚前にカウンセリングに来るカップルは、そうした何かしらの違和感や不安を抱えていることが多いんです。第三者の私が間に入って話を聞くことで、どこにその火種があるのか、解決できるものなのか、必要な手立てを一緒に考えていきます。

 

落ちてしまうような恋愛と違って、結婚には「決意」と「覚悟」が必要です。覚悟を決めるために、好きという気持ちだけでなく、お互いの価値観をすり合わせていく。それぞれの違いを知り、理解することがその第一歩になるんですね。

 

 

 具体的には、どんな価値観をすり合わせていくのでしょうか?

 

よしおか: たとえばまず、お金の価値観。どれくらい貯金をしていて、稼ぎに対してどんなふうにお金を使っているのか。結婚前に相手の経済状況は確認しにくいかもしれませんが、金銭感覚があまりに違うと、結婚後にどちらかが苦労する可能性が高いので、ある程度把握しておいたほうがいいと思います。

 

次に、実家との距離感。実家暮らしが長いと、親の価値観が無意識に染み込んでいるケースが多いんですね。そうすると、親に言われたことで迷いが生じて、パートナーに対して不信感を持ってしまうことも。

 

パートナーと新たに家族を築いていく際に重要な鍵となるのは、親との関係性を客観的に捉えて、精神的にも自立していること。もちろん結婚する上で、お互いの家族との関係も生じますが、パートナーとの距離は、親よりも近いことが大前提です。

 

「理想」にとらわれないよう、多様な家族のかたちを知る

 

大なり小なり、親の価値観、自分が育ってきた家族の影響を受けている人は少なくないようにも思います。

 

よしおか: 家族として、長い月日の中で積み重ねてきたものがありますからね。

 

たとえば、女性が働くことが当たり前になって、外では男性も家事育児を、と言っていても、いざ家庭の中ではパートナーに任せっきりという人も多いんですよ。それはやっぱり、専業主婦の家庭で育ち母親が家事育児をしていた古い記憶が染み付いているからで。満足して育てば育つほど、「親みたいになりたい」という理想像を掲げてしまう可能性が高いんです。

 

逆に、家族関係にトラウマがあると「親みたいになりたくない」という理想像に縛られてしまうこともあります。反面教師にしているのに、うまくいかないときに、自分と親を重ねて自己嫌悪に陥ってしまうんです。

 

自分が育ってきた家族の風景から導き出した「理想」にとらわれてしまうケースがあるんですね。

 

よしおか: でも、たいていは理想通りになんていかないですから。「こんなはずじゃなかった」となります。子育てもパートナーシップも一筋縄にはいかない、うまくいかないときがあって当たり前なんです。

 

 

そうした理想を手放すにはどうすればいいでしょうか?

 

よしおか: 自分の親以外のパートナーシップや家族のかたちに触れるといいと思います。幼い頃から友だちの家や地域に開かれた家など、いろんな家庭を行き来できるといいですが、大人になってからでも遅くないと思いますよ。行き来するのが難しいときは、見聞きするだけでも良いと思います。

 

あの子のお父さんはリビングで遊んでくれるけど、あの子のお父さんはずっと部屋にこもって仕事をしている、とかね。そもそも親のあり方、パートナーシップや家族のかたちに「正解」はないので、みんな違っていいんです。

 

ゆうみさんはまさに、里親のようなかたちで多くの子どもたちを家庭に受け入れ、「東京ガレージ」、「asobi基地」として自宅を開いていらっしゃいます。今も子どもたちの遊び声が聞こえますね。

 

よしおか: 私がこうした活動をしているのは、子どもたちに自分の家族以外の原風景を残したいと思っているからなんですね。

 

ゆうみさんが「asobi 基地」として解放している自宅のガレージにはツリーハウスがあり、学校帰りの子どもたちが集う。

 

生理、出産、更年期。女性ホルモンの影響を把握する

 

金銭感覚、実家との距離感と理想像。ほかにカップルですり合わせたほうがいいことはありますか?

 

よしおか: プリマリタルカウンセリングでこれから夫婦になるカップルにお伝えしているのは、「女性は毎月の生理、産前産後、更年期など女性ホルモンの影響を大きく受ける」ということですね。

 

出産後「妻の人格が変わった」「攻撃的でイライラしている」と言う男性が多いんですが、それは女性ホルモンの影響であって、人格が変わったわけじゃない。そういう知識をお互いが持っていないと、人格を否定するような喧嘩に発展したり、気持ちが離れたり、関係性が崩れていくことにもなりかねません。

 

ホルモンによる心とカラダの揺れが、夫婦の関係性の揺れにつながっていくケースもあるんですね。

 

よしおか: お互いに知識があれば、「ホルモンの指令には逆らえないから、どうしようもないね」と言い合えますよね。面と向かって伝えるのが難しければ、生理や出産、更年期のホルモンバランスの乱れについて書かれたWEBの記事や本を探して「これを読んでおいてね」と渡してみるのもいいと思います。

 


女性自身も自分のカラダのことを知らないケースもあると思うので、一緒に学んでいけると良さそうです。

 

よしおか: そうですね。あとは、話しにくいし変わっていくかもしれませんが、性に関すること。セックスレスで悩む夫婦はすごく多いです。ふたりが納得していればセックスがなくてもいいんですが、どちらかが不満を持っている場合は、どうしてほしいか話せるといいですね。

 

それから、不妊治療や両親の介護など、ライフイベントとして起こりうることについても話しておけるとよいと思います。働きながら対応していくことはなかなかハードルが高いので、思いがけず突然やってくると混乱してしまいます。事前に確認できることはしておいて、どれだけの時間とお金を使えるかを考えてみるとよいですよ。

 

介護の問題は、それぞれの親に、介護が必要になったらどうしたいか、亡くなったときに相続をどうするかなど、ことあるごとに聞いてみることをおすすめします。

 

一人の人間に求めすぎず、バランスを保っていく

 

こうしてお話をうかがってみると、結婚前に、結婚後もそうだと思いますが、パートナー間ですり合わせておいたほうがいいことってたくさんあるんですね……!

 

よしおか: そうなんです。プリマリタルカウンセリングに来るカップルの中には、結婚しない、あるいは結婚以外の選択肢を取る人たちもいますよ。それくらい結婚して、人生のパートナーになっていくということには、それなりの覚悟がいるんですね。

 

だから、恋愛をして好き同士で結婚したカップルがお互いを「好きじゃなくなる」という気持ちはわかります。惚れた腫れたの話じゃないですからね、結婚は。相手を好きかどうかなんて言ってられないですよ(笑)。

 

たしかに(笑)。恋愛対象、恋人という感じではなくなりますね。

 

よしおか: 長年連れ添っていても恋人のようなカップルもいますが、稀有ですよね。パートナーを恋愛対象として見すぎてしまうと、その欲求が満たされないときに、他の人に目が向いてしまうこともあるかもしれません。そりゃあ外にいる人の方がすてきに見えますから(笑)。

 

結婚は、生活をともにする同志であり、きれいなところも汚いところも見せて、受け入れあいながら家族愛を育んでいくので、より安心感のある絆になります。

 

 

そもそも一人の人間に、夫として父として、妻として母として、個人として、いろんな役割を求めることにも限界があるような……。

 

よしおか: はっきり言って、ぜんぶを満たすのは、無理です。父親としてはいいけど、夫としては物足りないとかね(笑)。一人の人間にすべてを求めるのは無理な話なので、相手の足りない部分も受け止めながら、やっていくしかないですね。



逆に、役割や理想にとらわれすぎてしまうと、演技のようになってしまい、本能や感情といった部分を見失い、自分も家族も苦しめてしまいます。完璧でなくても、お互いに自然体でいる余地を許しあうことが長続きの秘訣だと思います。

 

おじいさんやおばあさんになったときに、あの時は大変だったね、それでも一緒にいられてよかったね、なんて言い合えたらいいですよね。長く一緒にいれば、どんな夫婦にも問題は生じるので、それまでは怒涛ですよ。でも、色々な困難をともに乗り越えるたびに絆は深まり、いざというときには一番の支えであり、かけがえのない存在になるんです。

 

なるほどー。人生100年の時代ですもんね。

 

よしおか: あとは、パートナーシップと、子育てや自分のこととのバランスも大事ですね。子育てにずっと全力を使いすぎて、パートナーシップや自分自身をおろそかにしてしまう人も少なくないです。子どもの成長に合わせて、少しずつ子離れしていくことで、子どもは失敗しながらも自立していきます。

 

でも、子どもにしてみたら、親が自分を犠牲にして「あなたのためにこんなにやっている」という姿勢でいるのはかなり重たいですよ。親の人生を重ね合わせられてしまっては、子どもは自分の人生を生きられなくなってしまいますから。子育てに矢印が向きすぎてしまっている場合は、自分自身やパートナーにも向けてみる。そのバランスは難しいんですが、意識を向けるだけでも変わってくると思います。

 

「ただいる」ことに感謝して、挨拶を交わす毎日を積み重ねる

 

一筋縄にはいかないのがパートナーシップ。それでも、健やかな関係性を築いていくために、ともに暮らす日々の中でできることはありますか?

 

よしおか: まずは、相手のいいところに目を向けることですね。家族になると、パートナーは当たり前のようにそこにいる存在になります。そうなると、つい相手の足りない部分に目が行ってしまいます。不満をぶつけることも時には大事ですが、少し目線を変えて、相手のいいところを見つけて伝えてみる。

 

あとは、ただそこにいてくれることへの感謝を忘れないこと。色々求めてしまいますが、本当はただそこにいてくれるだけでいいんですよね。

 

とはいえ、近くにいる家族は特に、わざわざ伝えるのは照れくさいし、意識しないと難しいと思います。対話も大事だけれど、忙しい毎日の中で時間が取れないこともあるし、感情的な部分は特に対話で解決できないときもあります。

 

だから、私が一番大事だと思っているのは、基本的な挨拶を毎日交わすことです。「ありがとう」「ごめんなさい」「おはよう」「おやすみ」「いってらっしゃい」「おかえり」って。

 

 

たしかに、毎日挨拶を交わす相手って、一緒に暮らす家族以外はあんまりいないですもんね。それだけでも特別な存在とも言えるのかもしれません。

 

よしおか: 毎日ヨガをすればカラダが整っていくように、毎日挨拶を交わしていれば、パートナーシップや家族の関係性も整っていくと思うんです。たまにでいいから、相手のことを大切に想っているよ、と「心を遣う」。相手の好きな食べ物を買って帰る、とかね。大きな努力はいらなくて、小さなことの積み重ねが健やかなパートナーシップを育んでいくんだと思います。

 

text by 徳 瑠里香 photo by 常住祐輝

よしおかゆうみ 

ファミリー心理カウンセラー・プリマリタルカウンセラー

大学卒業後、出版社に 2 年勤務後転職。東京都の職員として、長年幼児教育に携わり、多くの実践研究に取り組む。後年は、新人教諭対象の研修講師を務める。大学で心理学を学びながら「乳幼児期から青年期までの発達と自立」の共同研究を深め、思春期相談員・家族心理カウンセラーとして独立。思春期アスリートのメンタルサポートや、大学・高校での性教育やキャリア教育の授業も担当する。また、自宅を開放し、0 歳~大人のコミュニティ“asobi 基地“や 10代がホンモノに出会う場”東京ガレージ“での活動に力を注いでいる。詳細はこちら。

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