Web Magazine

柿の木便り

生理中も快適に。女性をもっと自由にアクティブにしてくれる「月経カップ」(前編)

生理中って、ちょっと気分が憂鬱になったり、ムレやかゆみなどデリケートゾーンに悩みを抱えたり。ナプキンを持ち歩いていちいちとり替えるのも面倒。この煩わしさから解放されたい!

 

そんな気持ちに寄り添ってくれる、ナプキンやタンポンに替わる新しい生理用品があります。シリコーン製のカップを腟中に入れて経血を溜めて使う「月経カップ」です。

 

そもそも月経カップでどんなもの?  着け心地に違和感はないの? 使うことでどんなよいことがあるの?

 

そんな素朴な疑問を、女性がより快適に自由になれるヘルスケア商品を届けるインテグロの代表・神林美帆さんに投げかけてみました。

 

   

生理中の不安と不快から解放してくれる。月経カップの基礎知識

 

−ずばり、月経カップってどんなものなのでしょうか?

 

  

 

  
神林: 月経カップは、この鈴のような形をしたカップを、タンポンと同じように腟内に挿入して経血を溜めて使用する生理用品です。

 

タンポンと違うのは、まず、素材。月経カップのほとんどが、コンタクトのソフトレンズやカテーテルなどに使われる医療用シリコーンでできています。身体に優しく副作用など有害な影響を与えないことが証明されていて、肌馴染みがよいんですね。

 

最長12時間つけておくことができるので、生理中、頻繁にトイレに行ってとり替える必要もなく、長時間の会議やスポーツにも集中できるんですね。量が多い日の夜も安心です。タンポンのように紐が出ることもないので、温泉やプールにも入れますし。お子さんがいる方からは「生理中も経血を気にせず、毎日子どもと一緒にお風呂に入れるのが嬉しい」という声も届いています。

 

−魅力的ですね…!生理期間中、腟内に挿入していて違和感はないんでしょうか?

 

素材に加えて、形状も腟に馴染みやすく、腟には無感覚ゾーンがあるので、長時間つけていても違和感がないんです。愛用者の方はよく、「自分が生理であることを忘れてしまう」とおっしゃっています。

 

−ナプキンやタンポンと比べて、女性のカラダ、デリケートゾーンにとって良いこともあるのでしょうか?

 

神林: カップを腟内に入れるなんて不潔では?と思っている方もいるかもしれませんが、そもそも女性のデリケートゾーンは無菌ではなく、菌が生息してバランスを保つことで、自浄作用が働いています。

 

タンポンは吸収型なので、経血と一緒に常在菌を含む分泌液も吸収しちゃって、自浄作用を低下させちゃうこともあるんです。乾燥したり、菌のバランスが崩れてカンジダになりやすくなる人もいます。また、タンポンは繊維でできているため、長時間使うと細菌が増殖しやすく、非常に稀ではありますが、TSS(トキシックショック症候群)のリスクもあります。一方、月経カップにそうしたリスクはほぼないんですね。

 

あとは、ナプキンのように、ムレることもなく、かゆみやかぶれの心配もありません。月経カップはタンポン3~4本分の経血をカップに溜められ、経血が空気に触れないので、ほとんどにおいもないんですね。

 

それから、生理中って漏れるのが一番不安じゃないですか。腟内にピタッと張り付く月経カップは漏れる心配がないので、その不安からも解放されるんです。慣れない間は、少し漏れることもあるので、経血を吸収する吸収型サニタリーショーツも合わせて使っていただくと安心です。

 

私自身、月経カップを使うようになってから、ナプキンのにおいを気にしたり、漏れを心配したりすることが煩わしかったことに、初めて気づきました。それまでは、当たり前のことだと思っていたので。

 

 

  

どうやって使うの? 挿入法から取り出し方、保存の仕方まで

 

−具体的な使い方について、教えていただきたいのですが……!

 

神林: はい。インテグロで取り扱っている「エヴァカップ」という月経カップを使ってご説明しますね。

  

 

写真提供:インテグロ株式会社

  

 

まず、このリムという部分を折りたたんで腟に入れていきます。折りたたみ方は、いくつかのパターンがあるんですが、一番挿入しやすいのは、「パンチダウンフォールド」。リムをグイッと底に押し込んで指を抜いてつまむ。先が細くなるので初めての方におすすめです。

 

   

 

  

「Cフォールド」は折るだけなので簡単なんですが、口が広いのでちょっと挿入しにくいかな。1年くらい使ってベテランになってくると(笑)、下に向かって半分に折る「セブンフォールド」が腟内でスムーズに開くのでいい!って言いますね。

  

 

写真提供:インテグロ株式会社

 

  

腟に挿入するときは、トイレに座って、あるいはスクワットのような姿勢で、息を吐いて力を抜いてくださいね。腟はまっすぐではないので、尾てい骨の方に向かって。尻尾のステムが隠れるまで挿入すると、リムがパンっと開いて密着します。カップがちゃんと開いていれば、漏れることなく本体に経血が溜まっていきます。初めは挿入するのに少し苦労するかもしれませんが、だんだん慣れてくると思いますよ。 

 

−出すときはどのようにするのでしょう?

 

神林: 親指と人差し指を腟に入れて、一番下のしっぽのようなステムに触れたら、ステムをたどりながら、カップ本体の下のほう、ちょうどすべり止めのリブがある辺りをへこませて、腟の壁とカップが密着しているのを解除してからゆっくりと取り出します。ステムは取り出しを補助するものなので、強く引っ張らないように注意してくださいね。ステムが見つからないときは、いきむとカップが下に降りてきます。慣れるまではお風呂場などで経血がこぼれても構わない!くらいの気持ちでやった方が取れやすいかもしれません。

 

   

写真提供:インテグロ株式会社

 

  
−使い終わったら、カップはどう保管しておくのでしょう?

 

神林: 月経カップは、箱を開けた一番最初に一度、煮沸消毒をします。その後は、生理期間が終わったら、水洗いをして乾かして、通気性のいいところに保管しておくんですね。ただ、面倒でなければ、2〜3ヶ月に1度くらいのペースで煮沸消毒をした方が、持ちはよくなるといわれています。カップの表面がベタベタしたり、ヒビが入ったりしたら、替え時です。

 

−どれくらい持つものなんでしょう?

 

神林: 医療用シリコーンは耐久性に優れていて、劣化しにくいので、10年ほど使っている方もいらっしゃいます。カップのお手入れ方法や腟の状態によっても劣化具合は異なるので、アメリカのFDAのガイドラインには1年で替え変えることを推奨してはいるのですが。

 

使い捨てではなく、繰り返し洗って使うことができるカップは、お財布にも環境にも優しいんですよ。

 

レジ袋が有料になりましたが、ナプキン1枚にはレジ袋4枚分のプラスチックが使われていると言われています。月経カップは全くゴミを出さないので、快適に生理期間を過ごしながら、環境問題にも貢献できちゃうんですね。

 

 

(後編へ続く)

 

text & photo by 徳 留里香 

神林 美帆(かんばやし みほ)さん
インテグロ株式会社 代表取締役社長/COO

約8年間、国内大手航空会社にて国際線キャビンアテンダントとして勤務した後、カナダに留学。2005年から米国ドライマウス向けオーラルケア製品の日本市場の立ち上げに携わる。2017年10月インテグロの代表に就任、ウェルビーイング事業を設立。2014年、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科修了、経営修士号MBA取得。