Web Magazine

自分の身体やライフスタイルに合うものはどれ? 広がる「生理の選択肢」

2022.03.08

デリケートゾーンから知る、わたしの心とカラダ

生理から妊娠・出産のしくみ、流産、不妊、更年期、デリケートゾーンのケアまで。小冊子『はたらく女性の心と身体FACTBOOK 〜未来のわたしに、今のわたしができること〜』では、わたしたちも学びながら、「知りたかった!」女性の心と身体のあれこれをまとめています。

 

専門家のインタビューを通して、紙面で展開した内容をさらに深掘りしていく第2弾のテーマは「生理の選択肢」。産婦人科医で医学博士、広尾レディース院長の宗田聡先生に監修・コメントをいただきながら、生理のしくみと、現状の日本にある生理用品の選択肢、さらには海外で展開される生理用品についてご紹介します。

 

生理と排卵のしくみ。脳が指令を出して妊娠に備え、子宮内膜を剥がして大掃除。

 

生理は、体内サイクルができて、妊娠・出産をする準備が整っていることを示すものでもあります。生物学的女性は、「原始卵胞」と呼ばれる「卵胞」のもとを約200万個持って生まれます。そして妊娠可能な時期になると、女性ホルモンの働きによって、一定のサイクルで卵胞から卵子が排出されます。これが「排卵」です。

 

排卵が起きると、子宮内膜はふかふかのベッドを用意するように1cmほどの厚さになり、精子と卵子が出会ってできる受精卵を受け止める準備をします。子宮は排卵するたびに、妊娠するための準備を進めているのです。

 

この排卵のしくみには、「脳」が重要な役割を果たしています。脳にある視床下部から命令がでて、下垂体から「LH(黄体化ホルモン)」と「FSH(卵胞刺激ホルモン)」を分泌することで、卵巣に向かって「卵をつくって!」「排卵して!」と指令を出しているのです。脳から指令を受けた卵巣は、妊娠に必要な2種類の女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。この2つの女性ホルモンが子宮内膜に働きかけることで、子宮内膜はふかふかと厚くなっていくのです。

 

 

受精卵がやってこない、つまり妊娠しなかった場合、準備していた子宮内膜は剥がれ落ち、次の妊娠に向けてリセット、子宮内を大掃除。用意していたフカフカのベッドのシーツを全部はがして、次に備えてまた新たにベッドメイキングをします。そうして月に1回のペースで子宮内膜が剥がれ落ちる現象、これが「生理」です。

 

 

生理が起きるたびに、生まれ持った卵胞から卵子は体外へ排出され減っていきますが、そもそも細胞は老化してどんどんなくなるため、毎月300500個ずつ減少していきます。ですから、月に一度、それもたった1個の排卵で卵子がなくなっていくのではありません。原子卵胞が1000個程度になると、卵胞が育たなくなるため、排卵しにくくなり、生理も起きにくくなります。そうして迎えるのが「閉経」です。

 

 

排卵と生理をコントロールして、子宮内膜症や月経困難症を予防・治療する選択も

 

初潮が早くなり、妊娠期間・授乳期間が極端に減った現代の女性は、戦前の女性に比べて、生涯に経験する生理の回数が約400回分も増えています。

 

 

ライフスタイルが変化し、生理と排卵が増えたことによって、身体(子宮や卵巣)への負担による病気も増加しています。たとえば毎月排卵が起きていることで卵巣が刺激を受け、卵巣がんになるリスクが高まります。また、生理回数が多く子宮が活性化することで子宮筋腫や子宮内膜症になる危険も高まっています。身体の負担や病気のリスクを減らすために、低容量ピルやミレーナとも呼ばれるLNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)で、排卵回数を減らし、生理をコントロールする選択肢もあります。

 

「生理を起こすことが大事だと思う人もいますが、そもそも生理は子宮内膜が剥がれ落ちるただの新陳代謝のようなもので、排卵とは別物です。妊娠するためのしくみとして排卵があって、結果的に生理が起きるのです。なので、妊娠する必要がなければ、ホルモンを調整することで、排卵と生理を止めてしまっても問題はありません。むしろ、生理と排卵によって子宮や卵巣を刺激することで、子宮内膜症や月経困難症などの病気に悩まされることのほうが問題です」(宗田先生)

 

 

●低容量ピル

低容量ピルは、妊娠に必要な2つの女性ホルモンに似た成分を配合した内服薬。服用することで、ホルモンが充足した状態になり脳が勘違いして、卵胞の成熟と排卵が止まり、その結果、生理に伴うつらい症状が起こりにくくなります。性感染症は防げませんが99%以上の避妊効果も。生理周期が安定し、子宮内膜の増殖を抑える効果もあるため、子宮内膜症の予防や治療にもつながります。産婦人科で処方が一般的。費用は自費で1シート2000円〜4000円程度。副作用として、稀に血栓症のリスクがあるため、習慣的に喫煙をしていたり、40歳以上で血栓症のリスクが高い人にはおすすめできません。飲み始めに吐き気など消化器症状が出ることもありますが、多くは次第に慣れてなくなります。3ヶ月使用して、何か不具合などあれば、いくつかの種類があるので、主治医に相談し薬を変えてもらうこともできます。

 

●LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)

黄体ホルモンを持続的に放出するT字形の器具を子宮内に装着することで、子宮内膜が増殖しにくくなり、生理痛や経血量を減らすことができます。日本ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、99%以上の避妊効果が認められているため、多くの国で避妊具としても使われています。産婦人科を受診して装着します。費用は保険適用で1万円程度(避妊目的だと自費になります)。一度装着すると約5年間、効果が持続します。

 

紙ナプキンだけじゃない生理用品。自分が快適に過ごせる選択を。

 

排卵と生理自体をコントロールする選択は、妊娠を考えている人には向きませんし、低容量ピルの内服やLNG-IUSの挿入に抵抗がある人もいるでしょう。経血を受け止める生理用品の選択肢も広がりつつあります。使いやすさ、着け心地のよさ、コストパフォーマンスなどの観点から、自分にフィットする生理用品を試しながら、使い分けや組み合わせも含めて、選んでいけたら憂うつな生理期間も少しだけ快適に過ごせるかもしれません。

 

 

紙ナプキン

生理用品の中で一番よく使われているもの。ショーツに貼り付けて、経血が溜まったらトイレで交換。夜と昼、多い日、少ない日など経血の量によって厚みを選択できます。使い捨てのためコストがかかること、多い人には交換回数の手間や漏れるリスクも。また、蒸れることでニオイや皮膚トラブルの原因になることもあります。

 

布ナプキン

綿やシルクなど肌に優しい素材の布をショーツに固定してしようするナプキン。敏感肌の人もデリケートゾーンの肌トラブルを避けやすくなります。外出先の場合、汚れたナプキンを持って帰る必要があり、つけ置き洗いや手洗いをする手間がかかります。洗って繰り返し使えるためゴミが出ません。

 

吸水型ショーツ

水分を吸水するショーツ。履くだけなので簡単に使用でき、日に何度も替える手間なし。繰り返し使え、常備する場所も取らないなど、長期的にはコスパがいいです。ショーツの種類によっては量が多い日は漏れる可能性も。水洗いした後に洗濯機で洗うなど手入れをする必要あり。スタイリッシュなデザインのショーツなど、選ぶ楽しみがあります。

 

タンポン

膣に挿入して使用する生理用品。最大8時間使用することができ、お風呂やプールに入ることも可能。量が多い人はナプキンなどと組み合わせる必要もあります。排尿時に紐が漏れたり交換し忘れたりすると不衛生に。また、稀に黄色ぶどう球菌による毒素が要因で高熱やめまいなどが起きるTSS(トキシックショック症候群)になるリスクもあります。

 

月経カップ

医療用シリコンでできたカップを膣内に挿入して経血を受け止めます。メーカーにもよりますが、最大12時間など長時間使用できます。カップを折り曲げて膣内に挿入するため、慣れるまでは挿入・取り外しに苦労する可能性も。洗浄、煮沸消毒して繰り返し何年も使用できます。正しく着用すれば、経血が漏れることはないので、海やプール、温泉も楽しめます。


詳しくはこちら:生理中も快適に。女性をもっと自由にアクティブにしてくれる「月経カップ」

 

「当たり前の話ですが、どんな生理用品にもその人に合う合わない、相性がありますからね。ご自身の身体とライフスタイルに合ったものを選びましょう」(宗田先生)

 

さらに広がる!?日本にはまだ上陸していない、海外の生理用品の選択肢

 

近年、海外を中心に盛り上がりを見せている「FemTech(フェムテック)」。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語で、女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する商品・サービスを意味します。生理用品の選択肢も海外では、「生理の貧困」を解消するナプキンの洗浄キッドやオーガニックコットン100%のナプキンとタンポンを掛け合わせたタンプライナー竹やバナナの繊維でできた月経パッドなど、より広がっています。日本にはまだ上陸していませんが、今後上陸するかもしれない、注目の生理用品をご紹介します。

 

 

月経ディスク

月経カップの進化版とも言える、膣内で経血を受け止めるタイプの生理用品。ゴム製のリングに経血を溜めるフィルムがついています。月経カップと同様、最大12時間ほど着用可能で、タンポン4本ほどの経血を受け止めることができます。使用後はメーカーによって月経カップのように洗浄をして繰り返し使えるものもあれば、使い捨てのものもあります。リングは直径6.07.5cmほどあり大きく感じますが、やわらかい素材で縦に折り曲げて挿入するので、タンポンを挿入するのとさほど変わりません。

 

実際の商品はこちら:SHE PERIODINTIMINA

 

生理痛を緩和するウェアラブルデバイス

下腹部に貼ることで生理痛の緩和が期待できるウェアラブルデバイス。たとえば、イスラエル発の『Livia』は、音楽プレイヤーのようなカラフルでコンパクトな本体から伸びる2本のコード、その先端にある吸盤パッドを腹部に張り、緩やかな電流を流すもの。その微弱電流が痛みをつかさどる脳の伝達を止め、一時的に脳が痛みを認知しにくくなり、生理痛の痛みが緩和できるのだとか。世界60カ国で展開中。

 

ほかにも、オーストラリア発の『Ovira』のデバイス『Noha』は、生理痛信号が脳に届くのを防ぐ微弱電流を送る小型のデバイス。医療現場でも使われている、経皮的電気神経刺激療法(TENS)のしくみを使っているとのこと。

 

「日本ではまだまだフェムテックの認知度は低いように感じます。生理がオープンに語られるようになったり生理用品の選択肢が増えることはいいことだと思いますが、ブームに乗って目先のメリットに飛びつくのではなく、ベースとなるご自身の健康にも目を向けてほしいです。不摂生をしないで十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、デリケートゾーンに触れるものはコットンなど肌に優しい素材のものにするなど、テクノロジーの力を借りる前に、ご自身でできることもありますから」(宗田先生)

 

text by 徳 瑠里香 illustration by 遠藤光太

 

宗田聡先生

医学博士

広尾レディース院長、茨城県立医療大学客員教授、東京慈恵会医科大学産婦人科非常勤講師。日本産科婦人科学会専門医、臨床遺伝専門医・指導医、産業医、アメリカ人類遺伝学会(ACMG)上級会員(Fellow)。日英論文多数、専門書(翻訳)執筆にも定評があり、一般誌やWEBなどで女性の健康に関する記事を多数執筆。著書には、『産後ママの心と体をケアする本』『産後うつ病ガイドブック』『これからはじめる周産期メンタルヘルス』『31歳からの子宮の教科書』など。

最新情報は公式Instagram